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zoom RSS 上田早夕里著『華龍の宮』

<<   作成日時 : 2012/05/05 05:08   >>

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重厚なるハードSF小説であります。
『ラ・パティスリー』や『ショコラティの勲章』の作家と同一人物とは思えないほど、冷徹でありながら、救いのあるジェノサイドSF小説、地球滅亡小説であります。

『ラ・パティスリー』は、軽やかな恋愛ミステリー小説だが、『華竜の宮』は、重厚なSF小説である。

硬軟使い分けの出来る上田さんはすごい小説家である。

1冊や2冊、出版しただけで、小説家を気取っている連中は、読んでみなされ、へこむよ!恥ずかしくなるよ!

と毒を吐きたくなる。

何十冊も出しているベテランでも絶句する小説であるよ。

それほど、すごい小説でありますよ。

誰かさんは、2冊目どうしたんだろうね〜


すでに何十冊もの小説を出版され、自他ともに小説家と認められている人たちは、上田さんのデビュー作『火星ダークバラード』に対して第4回小松左京賞をあたえて出版界に迎えている。

小松左京賞は、伊東計劃や円上塔などを作家デビューさせたが、10回で休止している。

最近は女性作家にすぐれた作家が多いようでありますな〜

ミステリーなんか残酷すぎて読めないような小説もある。

女性が書く小説というと自叙伝やあまい恋愛小説が多かったけど、こんな硬派なエンターティーメントな小説を書ける小説家が出て来たことに驚く。


この『華竜の宮』は、一見平安時代の貴族社会小説を思わせるタイトルであるが、これはハードSF小説なのである。

現在の科学的根拠に基づいて書かれたデザスター小説である。

小松左京さんの『日本沈没』は日本だけが沈没する話であるが、この『華竜の宮』は、世界全体が、わずかな土地を残して沈没する話である。

温暖化により、南極の氷が解け、世界の海の水位が200メートル以上あがる。


水位が250メートルを超えたとき、日本は、島国というより諸島と言っていいぐらいしか残らず、人口も20世紀の十分の一になる。

他の国々の沿岸にあった大都市も海の底に沈んでしまい、もともと、低い土地に位置していた国は消滅してしまう。

ロシアや東欧諸国は大半が海の底に消えてしまう。


この地球規模の災害の後、世界は、大きく分けて3つの連合体で形成されるが、地球規模の破壊により流れ出したさまざまな汚染物質により、世界の自然は激変し、人間に対して牙をむくが、その危機を乗り越えた人類は、高度な情報社会を形成して、ふたたび繁栄をしていた。

人間さえも化け物と化し、魚舟、獣舟と呼ばれる生物を生み出し、致死性ウィルスやアカシデウニやムツメクラゲと呼ばれる海の怪物が生まれ、人間の寿命をちじめる。


だが、それでも、なんとか納まったかに見えた地球にふたたび大きな激変が起きようとしていた。

その中で、活躍する日本の外交官の青澄・N・セイジとそのパートナーであるロボット”マキ”の物語である。

ロボットといっても人間に近い知性があり、アシスタント知性体と呼ばれ、本体は小さな電子機器の塊であるが、人間の脳と無線ランで交信が出来、ネットワークを通じて頭の中で考えるだけで世界中からの情報も得ることができるように人間はなってきている。

アシスタント知性体は、人間の生涯の考えるパートナーとなり、官僚や金持ちはボディーをあたえて、連れて歩いている。


ただのデザスター小説というより、現在でも見られる、国と国の政治抗争と日本国内での政治家や役人たちの利権争いなどの、人間の醜い争いのほうが多く描かれている。

何十年後、何百年後の子孫のために、財産を残すより、自分の快楽のために使おうとする日本政府内の強欲な政治家たちや高級官僚との戦い。

紛争を何とか抑えて、解決しようとする人間と、自分の利益のためなら、大量虐殺も平気で行う国家(中国?)との戦い。

人類の存亡をかけた未曾有の災害そっちのけで勢力争いを続ける権力機構(アメリカ?)に対して、戦いを挑み続ける個々の戦い。


それでも、さまざまな人類を存続させようとする努力が行われ、いくつかのシェルター都市が完成する。

やがて、ユーラシア(中国?)大陸奥地で巨大な噴火が起こり、火の柱が列をなし、流れ出した溶岩が、海にとどいて煙を上げる。
そして、火山から噴き出した噴煙とともに、地球全体を覆い、地球は、氷河期を迎える。

この地球の長い冬を人類は生き残れるのであろうか?

神や宇宙人のような救世主は出現しない。

海で暮らす民の中に不老不死のような女性”ツキヨミ”と呼ばれるオサ(指導者)が現れるが、それをもってしても、地球の激変を止める力はない。


この異変の直後に打ち上げられた宇宙船には、マキたち人工知性体が搭載され、地球の異変を見守っている。

人間は、最初の災害の時、生き延びるために宇宙開発を中止していたために、宇宙に行くことが出来なくなっていた。

彼ら人工知性体が太陽系外を抜け出してふたたび帰ってくるときに、人類は存続しているのか?


どのように地球が変貌しているのか?


誰も知るすべはないのである・・・・・・・・・



                       


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参考資料







華竜の宮 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
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上田 早夕里

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
SFマガジンとか読んでた頃は新しい作家さんのも色々読んでいたのですが、、、
上田早夕里さん、さっそくチェックしてみます!
マーシャの乳母や
2012/05/05 14:22
上田早夕里さんですか、知らなかったです。要チェックですね
『日本沈没』、子どもの頃、ドキドキしながら毎週テレビで観てました。
ここ数年で、地球規模で何らかの異変が重なっていくでしょうね。できることなら、大異変は私たちが死んでからにしてほしいなあ^^;
キーブー
2012/05/05 15:32
☆ マーシャの乳母やさんへ
ねこのひげも、以前はSFマガジンは読んでましたが最近はダメですね。
なかなか面白いですよ。
ねこのひげ
2012/05/05 18:32
☆キーブーさんへ
『ラ・パティスリー』などの現代ものもいいですが、SFのほうもおもしろいですよ。
そうですね。
なんだか、地球規模で変化が起きていて不気味ですね。
いつ起きるんでしょうね・・・見てみたい気もするけど、見た途端死んじゃうでしょうね。(+o+)
ねこのひげ
2012/05/05 18:38
マイクル・コナリーや海堂尊さんのミステリを
読んできましたが女性作家のミステリも
面白そうですね。『ラ・パティスリー』あたり
から徐々に読んでみたいです。

世界沈没、怖いですねー。

ひまわり
2012/05/06 02:15
☆ ひまわりさんへ
『ラ・パティスリー』は、パテシェ見習いの女の子が巻き込まれていく甘く切ない恋愛ミステリーです。
殺人事件などはおきませんがおもしろいですよ。

世界沈没。温暖化がすすまなくても、地球そのものの変化により起きる可能性があるそうです
ねこのひげ
2012/05/06 05:54

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