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zoom RSS 畠中恵著『ちょちょら』ー江戸留守居役という役職

<<   作成日時 : 2012/05/28 05:11   >>

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『ちょちょら』とは、江戸時代の言葉で、弁舌のたつお調子者。いい加減なお世辞。調子のよい言葉という意味である。
畠中恵さんといえば『しゃばけ』シリーズであるが、この『ちょちょら』は『しゃばけ』とは違い妖(あやかし)は出てこない。
畠中恵さんの新境地である。
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兄の突然の死により、その兄の役職を引き継いで、多々良木藩の江戸留守居役となった間野新之助が、苦闘する物語である。

なったはいいが、頼りないことおびただしいのが間野新之助である。

なんのとりえもない。

前任者である兄は、美男であり、剣術に優れ、学問に優れていた。その兄に比べれば、すべてが劣っているのが弟の間野新之助であった。

美男でもないし、剣術もダメ、学問もダメ・・・・・とりえは・・・・なし!

なのである。

次男である間野新之助は、部屋住みの厄介者であり、養子口を探して婿に行くしかなかった。

それは、江戸時代全ての武家の家に生まれた次男三男の運命でもあったが。

婿に行けなければ、一生、屋敷の片隅の一部屋で、独身で家の厄介者として兄に養われることになるのである。

だから間野新之助も、いずれは・・・・・と思っていた矢先に、多々良木藩の江戸留守居役である兄千太郎が、とつぜん自分の部屋で切腹したのである。

多々良木藩の江戸留守居役で、幼馴染の美人の千穂殿と結婚するばかりになっていた兄千太郎が、なぜ切腹したのか?

その謎をおうために、間野新之助は、兄の後をついで江戸留守居役を拝命したのである。

江戸留守居役というのは、いまでいうところの、外交官のトップ、大使のようなものである。

いまでも各国に大使がいるように、江戸時代の藩は、ひとつの国であるから、江戸留守居役というのは、まさに大使であり、重要な役職であった。

間野新之助の多々良木藩は、播磨の国、現在の兵庫県の西部にあった五万五千石の小さな藩(国)である。(ただし多々良木藩は架空であるようだ)

その藩の外交の責任者であったのが江戸留守居役であった。

そのような役職をきのうまで、部屋住みで、無職で、のんべんだらりと生きてきた次男坊の間野新之助がやることになったのであるから、さあ、大変!てんやわんやの大騒ぎである。

当時は、ほとんどの役職が世襲であったので、本人の能力にかかわらずなることが多い。

現在も似たり寄ったりではありますがね。

任命した家老も”平々々凡々々”であると、”平々凡々”と言うだけではでは気がすまず、々をもうひとつ余分に付けたくらい間野新之助は、凡平な男であった。

自分が平凡な男であることを、いや兄よりはるかに劣る平凡以下の人間であることを、間野新之助も自覚していた。

だから、他の藩の先輩である同じ役職の江戸留守居役たちにいじめを受けても耐えて勤めていた。

いじめといっても、実は他の留守居役たちは、新米の留守居役である間野新之助に、留守居役の心得を教えてくれていたのだ。

そうしなければ、新米の留守居役である間野新之助が失敗すれば、自分たちにも被害が及ぶかもしれないからという理由があったのだが。

江戸城内を歩くだけでも新米の江戸留守居役である間野新之助にとっては大変なことであった。

江戸留守居役となったので、江戸幕府の重役たちにあいさつ回りに行こうとして、江戸城内を歩いているうちに迷子になってしまったこともある。

ここはどこだ・・・・?焦っ・・・・・・?

最初に案内してくれた表御坊主の宗春にぐうぜん出会って助かったが、それほど、江戸城内はめちゃくちゃ広いのである。
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江戸城。
現皇居は一部公開されてますから、お暇なときに歩いてみてください。いかに広いかがよくわかります。
江戸城天守閣跡、松の廊下跡が観れます。



そうこうしているうちに、”お手伝い普請”の話が持ち上がった。

『お手伝い普請』とは、幕府が河川工事や新田開発、神社仏閣などの造営や修理をするときに諸大名に金銭の負担を命ずることである。

何千両、何万両も出費させられることがある。

ので、諸藩は、それから逃れるために必死になる。

間野新之助の多々良木藩とて同様である。とくに、多々良木藩は貧乏藩の上に去年一昨年と凶作であったために、財政難でとてもではないが、何千両どころか何百両、何十両も出資することは不可能である。

他の藩も似たり寄ったりであったが。

しかし、幕府から命ざれれば、断ることは不可能である。

そこで、諸藩はお手伝い普請を逃れるために、”つて”を頼って、幕府の重役たちに賄賂や接待などの裏工作をするのである。

その時に、外交官たる江戸留守居役の手腕がいかんなく発揮されるのであるが・・・・

新米の江戸留守居役の間野新之助は、うまくやれるのか?

多々良木藩の浮沈がかかっているのに、頼りないことこのうえないのである。

とりあえずは、表御坊主の宗春に、付け届けを持っていこうと江戸城内にはいたら事件が・・・・

松平外記という西の丸書院番が、同僚たちを次々と切り殺して切腹するという事件が起きた。

これは、実際に起きた事件である。


以前・・・・
国立公文書館で、2010年4月に、江戸時代の旗本・御家人の生活の文章の公開をしてまして・・・・記事にするつもりでいたのですが、うまくまとまらず、いままで公開せずにきてしまったのですが・・・・(^^ゞ

そちらの記事はボツにして、画像だけを、この記事のために紹介します。


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この画像がその時の事件を記したものです。

文政6年4月22日(西暦1863年6月1日)に江戸城内でじっさいに起きた事件です。

同僚たちが新人いじめをしたわけで、それがあまりにひつこく酷かったので、松平外記は、ついに堪忍袋の緒が切れて刃傷に及んだわけです。

この事件を利用できないかと、間野新之助は考え、他の藩の江戸留守居役と相談したことから、色々なことが起きて行き、間野新之助は江戸留守居役というものがどういう役職であり、大変な役割であることがわかってきて、やがて、他の藩の江戸留守居役を巻き込んで、その中心人物となって行きます。


このあたりまでが、話の発端です。


話は、まだまだ複雑怪奇となり、まさに政治外交の魑魅魍魎の世界へと読んでいる者を引き込んでいきます。

そして、兄千太郎が切腹した謎も・・・・・


ある意味、化(あやかし)の世界より、ずーっとずーっと怖いです。


『しゃばけ』シリーズはどちらかというと漫画チックなおもしろさのある小説ですが、『ちょちょら』は、本格的時代小説に近い時代小説です。


しかし、畠中恵さんのユーモアと明るさは一灯も消えてません。


軽そうで重く、重そうで軽い・・・というのが畠中恵さんの世界です。


ぜひ、一度読んでみてください。


去年の3月発売だから、そろそろ文庫になるかもしれません。



                       



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タイトル (本文) ブログ名/日時
「ちょちょら」畠中恵
兄上、なぜ死んでしまったのですか?千穂殿、いま何処に?胸に思いを秘め、困窮する多々良木藩の留守居役を拝命した新之介。だが―、金子に伝手に口八丁、新参者には、すべてが足りない!そして訪れた運命の日... ...続きを見る
粋な提案
2012/07/06 17:42

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コメント(15件)

内 容 ニックネーム/日時
畠中恵さんはタイトルからして面白いですよね。
「しゃばけ」もですがさくさく読めそうで。
しかしながら今も昔もイジメは変わりませんね。
松の廊下のような悲劇もある訳で。。。
オススメの本はどれも面白いので「ちょちょら」も
読んでみますねー^^。
ひまわり
2012/05/28 12:44
「しゃばけ」気になっているんすよね〜
かるち
2012/05/28 13:50
畠中恵さんの作品は、ここ数日で「ころころろ」「ちんぷんかん」を読了したところです
凡庸なのに、大役を任されてしまいましたか〜。なんだか、現 防衛大臣のことが頭に浮かびましたが(笑)
藩同士の外交問題やらイジメやらが絡んで、けっこう重い話なのかと腰が引けそうになりましたが・・・畠中恵さんらしい明るさは消えてないのですね。
ふーむ、なるほど。なら読んでみようかなあ。
ファンタジーの世界もいいけど、時代ものの世界もおもしろいですよね。けっこう好きです(*^_^*)
キーブー
2012/05/28 16:47
☆ ひまわりさんへ
そう、畠中恵さんは、タイトルだけでなんだろう?と思わせて、ひきつけますね。
イジメはいつの時代も変わりませんね。
いやですね。
読んでみてください。おもしろいです。
ねこのひげ
2012/05/28 18:57
☆ かるちさんへ
『しゃばけ』シリーズもおもしろいですよ。
現在10巻ぐらい出ているかな?
ねこのひげ
2012/05/28 19:00
☆ キーブーさんへ
はっはは・・・防衛大臣を思い出しましたか(笑
でも、じつは凡平と思っていたのは、自分だけで、見ている人は見ていて、実は・・・
ユーモアとペーソスを交えながら、難局を乗り切っていきます。
その乗り切り方も、独特で、お菓子が絡んできます。
まあ、読んでみてください。(*^。^*)〜♪
ねこのひげ
2012/05/28 19:07
物書きは大したもんですね。
想像力でわたしらには及びもつかない奇妙な世界を造り出す。
夢の中の出来事を人にわかるすじに仕立てて鮮やかにパッと広げちゃう。こりゃたまらんね。
まったくどんな頭をしてるんだろうか?
moumou.h53
2012/05/28 19:17
☆ moumou.h53さんへ
ほんとですね。
どんな頭の構造をしていたら、小説なんか書けるんでしょうね。
ねこのひげ
2012/05/28 19:23
いつもながら、ねこのひげさんの解説は巧い!
半分読んだ気になりながら、続きが読みたくなります
なんか光景が目の前に出てくるんですよねえ
江戸時代に思いを馳せつつ・・
早速Amazonに・・(笑)
タフィー104
2012/05/29 05:39
☆ タフィー104さんへ
ありがとうございます。恐縮です<(_ _)>
明るく書かれているので、気楽に読めますが、でもよく考えると怖い話です。
他の作家だったら、重い話として書かれたでしょう。
ねこのひげ
2012/05/29 06:34
表紙の絵と題名から受けた印象は頼りない主人公の面白おかしい話かと思いましたが違うようですね。興味をそそられます。これはねこのひげさんの誘導?がお上手だからですね、きっと。
うずら
2012/05/29 13:55
畠中恵さんの『しゃばけ』シリーズ、大好きですよ〜
もちろんそれ以外も面白いです
ふわぁ〜んとした文体が私には合うようです
マーシャの乳母や
2012/05/29 16:47
☆ うずらさんへ
間野新之助は頼りりないんですよ。
でも、必死になって考えてなんとかしようとする姿がいじらしいんですね。
だから、周りも助けてやろうとするわけです。
先輩の留守居役たちが、そんなこともわからんのかと間野新之助の頭をポカリと殴りながらも、間野新之助に踊らされていきますんですよ。(^^)/
ねこのひげ
2012/05/29 18:51
☆ マーシャの乳母やさんへ
畠中恵さんのふあふあとした暖かい明るい文体はおもしろく楽しいですね。
この小説も明るいので、つい、一気に読んでしまいます。
でも、よく読んでみると、けっこう深刻な話なんです。
現代で言えば、会社が倒産するかもしれない騒ぎなんです。
それを乗り切るために、新人重役が大活躍するわけです。
ねこのひげ
2012/05/29 18:59
こんにちは。同じ本の感想記事を
トラックバックさせていただきました。
この記事にトラックバックいただけたらうれしいです。
お気軽にどうぞ。
藍色
2012/07/06 18:12

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畠中恵著『ちょちょら』ー江戸留守居役という役職 ねこのひげ/BIGLOBEウェブリブログ
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