ねこのひげ

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zoom RSS 夢枕獏著『大江戸釣客伝』

<<   作成日時 : 2012/04/01 05:30   >>

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夢枕獏さんの作品は、アイデアはいいけど、文章はちょっとな〜・・・・とズ〜ッと思っていた。
だいたいSF小説を書く人は、アイデアに先走りすぎて、文章がいまいちな作家が多い。
『陰陽師』や『餓狼伝』『キマイラ』シリーズなども、おもしろいとは思ったけど、もうちょっと文章がなんとかならんものか?と思いながらも読んできたが・・・・・

いいかげんうんざりしたので、ここ何年間は読んでなかった・・・・・・

がっ!

去年、2011年10月に『大江戸釣客伝』上下巻を立ち読みしたら、あらっ!でありました。
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文章がうまくなっているんだな。

「男子三日会わずんば、刮目して見よ」でありましたよ。

で、さっそく購入。

やっぱり書店での立ち読みは大事だよね。ネット購入は、失敗が多い。

『大江戸釣客伝』も、ネットでしか見てなかったら購入していない。


いままでだと、周りの状況や人物の感情などが不鮮明でいまいち小説に感情移入できなかったのだが、この『大江戸釣客伝』は、感情表現や情景描写がきちんとしているので、おもしろく読める。


2012年3月5日に、吉川栄治文学賞に決まったそうである。

我が見る目も、多少はあったか!と喜ぶ次第であります。


よい作品でありますよ。




この作品は、津軽采女(うねめ)という実在の釣り好きの旗本の殿様が主人公の物語である。

豪商の紀伊国屋文左衛門や浮世絵師の多賀朝湖(後の英一蝶)や芭蕉の一番弟子である宝井其角、はては水戸黄門までが出てきて、釣り三昧をする物語である。

元禄時代において、釣りは一大ブームとなった。これは一に、戦乱が遠のいて、平和となり、武士たちが戦いをすることが無くなったからである。

特に、小普請組と呼ばれる、徳川家に仕える幕臣でありながら、なにも仕事のない侍たちは、禄という給料をもらいながら、日がな一日なにもすることがなかった。

彼らは、戦争をするための待機要員であったので、幕府も、不祥事でも起こさない限り首にするわけにはいかなった。


江戸幕府もなんとか仕事を振り当てようとして、1日交代とか三日交代で、仕事をさせたり、積極的に仕事を得て収入を上げたい者は、上司に賄賂を贈ってなんとか仕事を得ようとしたが、それでも仕事のない人間が出たのである。

そこで、暇を持て余した連中は、色々な趣味に走った。

浮世絵を描いたり、俳諧をしたり・・・・しかし、小普請組というのは、安月給取りなので、吉原などでどんちゃん騒ぎをするというわけにはいかなかった。

それが、釣りブームを呼んだ。

魚を釣り上げれば、晩飯のおかずにもなるというので、おおいに流行った。

安月給なので、女房もいい顔をするというので、なおさらブームを呼び、町人たちにも流行った。

ともかく、生きていけるだけの生活費は幕府からもらっているが、一日なにもすることがなかったのである。

幕府も、釣りは武芸の一つであると称して、黙認した。江戸の町中で、暇を持て余した武士たちに悪さをされるよりはマシというわけだ。


武士も町人も、釣果を上げるために、さまざまな工夫を自らがした。

いまのように、チェーン店の上州屋で一式そろえるというわけにはいかなかった。

釣竿は自分で竹を切って作り、釣針は、自分で木綿針から作り、釣り糸は絹糸から作り出した。

さらに、それぞれが、独自の工夫を凝らした。

それぞれの名前の付いた釣針や浮子があったそうで、現在でも、魚の種類によって針を変えたりするのは日本人ぐらいなものだそうである。



津軽采女というのは、津軽弘前藩の分家の黒石藩4000石の藩主で、旗本であったが、諸般の事情により、無役で、釣り道楽にふけっていた。

4000石の大旗本が無役というのは、本来、あり得ないことなのだが、色々な事情が重なり、役職についていなかったようである。

この殿様も一日なにもすることがなかったところに、釣り好きの家来に勧められて、釣りを始めたら、はまってしまい、毎日のように釣り三昧ですごした。

その津軽采女が、米沢藩上杉綱憲の養女阿久里と結婚することになった。この阿久里は、吉良上野介の娘であり、上杉綱憲は、実の兄で、その兄の養女として、津軽采女に嫁いだ。

が、生来の病弱のため翌年死亡する。

これを申し訳なく思った吉良上野介の尽力により、第5代将軍徳川綱吉の側小姓として、仕えることになる。

綱吉といえば、あの綱吉である。

そう、『生類憐みの令』を発行して”犬公方”と呼ばれた綱吉である。

津軽采女は、側小姓という重要な役職のうえに生類憐みの令のおかげでなおさら釣りをすることができなくなるのである。

無役のときは、4000石の旗本の殿様という身分にもかかわらず、江戸の町人たちに交じって釣り三昧にふけっていたのが、できなくなったのである。

小姓というのは、テレビ番組では、殿様の後ろに刀を捧げ持っている少年という印象をあたえるが、側小姓というのは、現代の秘書や執事兼ガードマンのような役目であるから、大人が行う重要な役職であった。

無役のときは、隅田川や鉄砲洲で町人に交じって釣りをしたり、釣り船をしたてて江戸湾で釣りをしたりしていた。

屋敷の前が川であったので、釣ろうと思えば釣れたのであるが、それができなくなった。

いい迷惑であったろうな。


そうこうしているうちに、多賀朝湖は、釣りをしているのがばれて、八丈島に流されるは・・・・釣り仲間であった小普請組の侍は切腹させられるは・・・・町人の中にははりつけにされたり、打ち首、獄門にされたのも出た。

なんせ、蚊を殺したからといって、切腹させられた侍まで出たのであるから、たまったものではない。

これが綱吉が死ぬまでの15年間も続いた。

江戸中、戦々恐々大騒ぎである。

生類憐みの令とは、いまの動物愛護法であるから、けっして悪法というわけでないが、綱吉が行き過ぎたと言えるのでありますな。

しかし、監視の目の届かない八丈島では釣り放題であったので、朝湖は釣りをしていたようである。

浮世絵も描いていたようで、八丈一蝶と呼ばれる浮世絵も現存する。


そして、例の赤穂浪士の討ち入りがあったあと、綱吉が死んだことで、生類憐みの令が、廃止されるというか、法としては残っているが、処罰はしないという、次の将軍、第6代将軍徳川家宣の命により、釣りが解禁となる。

ただし、亡くなった綱吉を慮って、鷹狩などは第8代将軍の吉宗まで行われなかった。


義理の父親であった吉良上野介が、赤穂浪士に殺された後、茫然自失状態であった津軽采女も、ふたたび釣りを始め、やがて、日本最古の釣りの指南書と言われる『何羨禄(かせんろく)』を執筆することになるという話である。


『何羨禄』は、復刻版として釣り文化協会から出版されているそうである。

興味ある方は読まれるとよいでしょう。

ねこのひげは、釣りにあまり興味がないというか、多少はやった経験はあるが、小学生の時、釣ったハゼを料理して出されたとき、すごくいやで食べる気がしなかった。

いまでも、数匹釣って食べる分にはいいけど、遊びで釣りたいとはあまり思わない。

100匹釣ったとか、200匹釣ったとか、釣果を競う神経が好きになれないので、あまりやらない。というか全然やらなくなった。

命をもて遊んでいる気がするのである。

「釣りは外道の遊びである」という一文も江戸時代の書物に観られるそうである。

その意味では、綱吉の生類憐みの令には賛成である。

綱吉の生類憐みの令の中には、人間に対するものもあり、年寄りや子供を大切にせよというものもあった。

いまの老人福祉法や児童福祉法の原型ともいえるもので、世界的に見ても、当時の世界のどこにもなかった法律である。


ある意味、先進的であったのである。


下の地図は『何羨禄』に載せられている江戸湾の釣り場の地図であるそうであります。
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これを見て気づかれる方は気が付くと思いますが・・・
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現在、陸地になっているところは、そのほとんどが海だったのでありますよ。

晴海、豊洲、デイズニーランド・・・全部海で、いい釣り場だったんですな。

黒鯛洲なんて名前からすると、東京湾で鯛が釣れたんですな。

黒鯛洲・・・・いまのお台場あたりですかね?

木場とあるのは、いまの木場公園であり、左隣の八幡とあるのは、深川八幡であり、左端の天王洲とあるのはいまの天王洲アイルのある場所です。

左下の羽田洲とあるのはいまの羽田空港あたりなのです。

つまり、昔、江戸時代の釣り場が、現在では埋め立てられて陸地になっているわけで・・・・

震度7が来たら、どうなるかは自明の理でありますな〜


津軽采女も、吉良上野介亡き後の元禄16年(1703年)11月22日深夜・・・・のちに元禄地震と呼ばれる地震に遭遇している。

津波も発生して、家屋が破壊され、多くの死者が出たそうである。

房総沖に二つの活断層が発見され、震度8から9の可能性も出て来た。


さらに、関東ではありませんが、福島の原発銀座と呼ばれる若狭湾には、いくつもの活断層が見られ、天正13年の11月(1586年1月)に起きた天正地震により、若狭湾を、津波が襲っていくつもの町や村が消滅したと、信長に仕えていた宣教師のフロイスが書いている。

今朝(4月1日)の朝刊によれば、南海トラフ巨大地震が起きれば、10メートル以上の津波が最大11都県に及ぶ可能性があるそうである。

北朝鮮のミサイルどころの騒ぎではないとおもうけどね。


シ〜ラナイと・・・・・!



                    




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参考資料






大江戸釣客伝 上
講談社
夢枕 獏

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大江戸釣客伝 下
講談社
夢枕 獏

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何羨録 (1981年)
釣り文化協会
津軽 采女

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コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
 夢枕獏さんは、エッセイは読んだことがありますが、小説はやはり途中で挫折してます(^^ゞ。
 この本は面白そうですね。彼は釣りが趣味というか、その域を脱しているようなところがあるから、題材としても合っていたのかもしれません。
 主人公が実在の人物というのも面白そうだし、時代背景にも興味があります。読んでみたいです(~_~)。
遊哉
2012/04/01 12:42
☆ 遊哉さんへ
中国の奥地やアマゾンに釣りに行かれた時の実体験がもとになっているのもあるのか、リアル感がありますね。
釣りの仕方も色々出てきておもしろいですよ。
ねこのひげ
2012/04/01 20:53
『陰陽師』は観ましたが読んではないです。
生類憐れみの令は魚を釣ることさえ罰されたんですね。
釣りは小学生の夏休みに旅行先でアユを釣り上げました。
ビギナーズラックですね^^。
房総沖のニュースはショックですがそもそも震度8とか
9なんてあるものだろうかと…。おちおち釣りもしてられませんね。
丸くなってるシロちゃんを見てる方が平和でいいです。
ひまわり
2012/04/01 22:50

まぁ シーシェパードから言わせると捕鯨をする日本人は大下道な訳で(笑)
根津神社の一ノ池で雷魚に噛まれたり 池ノ端池で野鯉釣りに明け暮れた渡辺は小下道でやんすね

しかし 家宣サンキューだよね 禁を解いてくれてヌ(笑)
ボーイング渡辺
2012/04/01 22:54
☆ ひまわりさんへ
『陰陽師」は、女性フアンが多いんですけどね。
魚を捕るのは漁師にだけは許されていたそうで、ただし江戸で殺してはならないというので、いまのように冷凍手段のなかった時代ですから、粋の悪い魚が出回って江戸庶民は困ったようです。

震度9とか想像できませんね。
ねこのひげの自宅近所の地元の人は、このあたりに引っ越してくる人が増えるかもと言ってます。
現に、福島から引っ越してきた家族が何組もいるそうです。
シロは、今朝も丸くなってます。でもサブは出かけてます((+_+))

ねこのひげ
2012/04/02 05:51
☆ ボーイング渡辺さんへ
日本人から言わせれば、「肉食人種が、自分のことを棚に上げて何を言ってやがる!」ですがね。
とうじの日本人は、肉も食べてませんでしたから大変だったでしょう。
家斉さんは、これで江戸庶民から人気が出て、名君と言われるようになったそうです。
ねこのひげ
2012/04/02 05:58
本屋に行くのが面倒だったり、時間がないとネット便利で利用します
たしかに!
失敗するんですよねえ
本屋だとさらっと立ち読みしてから買いますけど、ネットは慎重さ賭けますね
この主人公の名前「津軽」ってびっくり
やはり弘前出身ですか
母方の実家の性が「津軽」なんですが、珍しい苗字なんですよ
俄然興味がでました^^
タフィー104
2012/04/02 06:16
☆ タフィー104さんへ
ネットは便利ですけどね・・・・
受け取ったとき、期待していたのと違うときがあってガッカリすることがあるんですよね〜

津軽采女は、津軽弘前藩の分家、黒石藩の嫡男として生まれてます。
お母さんのご先祖様かも・・・・・
ということは、タフィー104さんのご先祖様でもあるわけで・・・・
世が世なら、タフィー104さんは殿様だったかも(*^。^*)
ねこのひげ
2012/04/02 06:36
『陰陽師」シリーズ、全作品を読みました。あの雰囲気が大好きなもので♪
この作品もおもしろそうですね。
歴史ものだし、ぜひ読んでみたいです

小学生のときに舟に乗って海釣りに連れて行ってもらいましたが。
まだ生きている魚を捌いてもらい、ピクピク動いている刺身を勧められましたが、食べられませんでした^^;
キーブー
2012/04/03 21:45
☆ キーブーさんへ
『陰陽師』シリーズは女性に人気がありますよね。平安時代ののんびりした雰囲気で起きる事件がいいんでしょうね。
この作品も時代背景の色々な係わりがわかっておもしろいですよ。

ねこのひげも、ハゼを煮て出されたんだけど・・・食べたけど・・・なんだかとてもいやでした。
今まで生きていたんですからね・・・・・・しばらく釣りはしませんでした。(^_^.)
ねこのひげ
2012/04/04 05:22

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