ねこのひげ

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zoom RSS 二人の刺青奉行と二人のテツ

<<   作成日時 : 2011/07/01 04:32   >>

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刺青判官といえば映画にもなりテレビの時代劇にもなりで有名なのが「この桜吹雪が目に入らないか!」の遠山の金さんこと、遠山金四郎だが・・・・それ以前にも刺青をしていた奉行がいた。
根岸鎮衛(ねぎしやすもり)という南町奉行である。
遠山金四郎に比べれば、ほとんど無名といっていい人物である。
しかし江戸時代の珍談奇談を集めた随筆『耳袋』の作者と言えばおわかりの方もいるかもしれない。
『耳袋』というのは、根岸鎮衛が30年間にわたって集め書き留めてきた珍談奇談を集めた書で江戸時代でも人気があった。
ろくろ首や狸や狐が化かした話や化け猫などの話が書かれている。夜中に石が泣いたとか・・・・・色々おもしろいあやかしの話が詰まっている。

最近は『新耳袋』なんて本まで出版されているから、現代の江戸人、東京人もあやかしが好きなのでありましょう。

いまでいう都市伝説みたいなものです。

ねこのひげも、あやかしが好きなので『耳袋』読んだのですが、江戸時代の人の生活や人情、犯罪にまつわる話なども書かれていて興味深い本です。


岩波文庫から三巻出版されています。






深田恭子さんが声を演じた3DCGアニメ『豆富小僧』の話も、この『耳袋』に書かれています。




京極さんや宮部さん、畠中さんなど、あやかし小説家のネタ本でもある。


しかし、書いた作者の根岸鎮衛のことは忘れていました。

NHKの時代劇ドラマになった平岩弓枝さんの『はやぶさ新八御用帖』にも根岸鎮衛が出てくる。他の作品でも出てくるが、脇役がほとんどで印象に残っていなかったのである。



根岸鎮衛は、江戸中期、元文二年(1737年)の生まれで、貧しい御家人の息子で、ご多分に漏れず、若いころは荒れていて、無頼の生活をしていた。いまでいうなら暴走族のようなものである。
貧乏御家人の息子ということになっているが、実は町人か農民出身ではないかという説もある。


江戸時代の身分制度は、テレビの時代劇ドラマで描かれているようながっちりとしたものではなく、金で身分が買われることがかなりあったようで、町人や農民から侍になったものもいれば、逆に町人や農民になった侍もかなりいる。

勝海舟が有名であるが・・・・

『東海道膝栗毛』で有名な戯作者『十返舎一九』は本名”重田貞一”という侍であり北町奉行所の同心でもあった。
売れるようになったら、侍を辞めて戯作者として生活した。

サラリーマンが作家になったようなものである。

けっこういるのである。


そのどっちつかずの無頼漢時代に、根岸鎮衛は、肩に赤鬼の刺青をしたために赤鬼と呼ばれていたが、やがて、米相場で稼いだ?といわれる金で御家人株を買い、御家人となり、旗本根岸家の養子となり、家督をついだあと、勘定方(いまでいう会計課のようなもの)にはいり、佐渡奉行、勘定奉行と出世をし、62歳の時にはついに南町奉行となったのである。

江戸の町人のなかには、稼いだ金で一度はサムライになってみたいというのが多かったらしく、御家人株は高値で取引されていた。株といっても実際に株券のようなものがあったわけではない。

与力で千両。同心で250両と言われていた。いまの物価で換算すると千両とは約9億円である。250両は約8千万円である。

それでも買い手がいた。

なんせ、それがあれば幕臣=将軍家の家来になれるのである。幕臣とは、いまの政府の役人や政治家のようなものである。同心とは、いまの警察官であるから、おおいばりできるというわけだ。


そういえばいまもいますね。なんど落選しても選挙に出てくる成金のおっさんが・・・


根岸鎮衛は米相場で稼いだ金で、跡継ぎがなくて潰れかけていた同心の根岸家の御家人株を買って養子として根岸家の家督を継いだ。米相場でとなってはいるが、じっさい、どうやってそれほどの大金を手に入れたかは不明である。


根岸鎮衛、かなりあやしい奴である。



で、この若いときにした赤鬼の刺青から、南町奉行になった後、刺青奉行とか赤鬼奉行と影で呼ばれていたらしい。

遠山の金さんの刺青も桜吹雪ではなく、おどろおどろしい般若の面であったそうだ。映画化するとき、般若では子供が怖がるだろうとというので桜吹雪になったそうだ。

それが定着してしまった。


しかし、どちらにしろ貧乏御家人から南町奉行となるのは異例の出世である。遠山金四郎は、親が旗本であり、長崎奉行だったから跡を継いだのであるし、長谷川平蔵も、親が400石の旗本であり、長男であるので跡目相続をしたのである。


根岸鎮衛は、最初は800俵取りの御家人からで、最終的には1000石取りの旗本で南町奉行にまでになったのである。


お笑い芸人が総理大臣になるようなものである。東国原がんばれ!なれんことはないぞ!というか・・・・・・・ならしたら日本の政治もたいしたもんだけどね。

あのとき総裁にしていれば、自民党もここまで苦汁を飲まされることもなかったかもしれない。


あの東国原おっさんは、したたかだと思うよ。おぼっちゃん政治家より、ズーッと頼りになると思うね。



げんに、根岸鎮衛は、勘定奉行をしていたとき、例の田沼意次から松平定信への政変があったときであるから、田沼派と見られて失脚してもおかしくはなかった。それが松平定信が失脚した後、還暦過ぎた62歳で、ついに南町奉行となったのである。


かなりの世渡り上手でありますな。


若いときに遊んでいたのが役に立ったのかもね。


東国原さんもね。


老中『松平定信』は、暴れん坊将軍こと第8代将軍・徳川吉宗の孫であり、奥州白河藩の藩主であり、『享保の改革』を行い、『白河の清きに魚のすみかねて もとの濁りの田沼こいしき』と詠われたぐらい厳しい改革を行ったため失脚したが、『天明の大飢饉』では地元白河で餓死者をださなかったほどの名君でもあった。




現代にも、この根岸鎮衛ぐらい打たれ強い政治家がいれば、日本の政治も安心だが、管総理大臣もなかなか打たれ強く、しぶといのでおもしろいことになるかな?


おぼっちゃん政治家どもはごまめの歯ぎしり状態だもんね。安倍にしろ福田にしろ、すぐにノイロゼーになるようでは総理大臣の器ではなかったということである。


8月に辞めさせると言われているけどどうかな?

ねばれねばれ!ねっばって後1〜2年ぐらい総理大臣をやればたいしたもんだ。


江戸町奉行というのは、いまでいうと東京都都知事と警視総監と裁判所長官と三つの長を兼任したような役目で、役職のうえでは老中の下であるが、江戸全体の治安を預かる重要な役目であった。


将軍にも拝謁できた。

罪人の死刑や遠島は将軍の直接の許可がいったためである。将軍が罪状を書いた書類を読んで許可を出さなければ死刑に出来なかった。老中などによる御前会議でも検討された。


人を死刑にするには、いまより厳しかったのである。


若いときの通称が鋳蔵(てつぞう)で、若い頃、『本所の銕(てつ)』と呼ばれていた鬼平こと長谷川平蔵と同時代の人であるのも面白いし、二人とも無頼漢であったのもおもしろい。


両方とも実在の人物である。


根岸鎮衛が1737年生まれで長谷川平蔵が1745年生まれである。長谷川平蔵のほうが若いが、平蔵は亡くなるのが1796年6月26日で50歳。
根岸が1815年12月4日で78歳であるから、根岸のほうが長生きした上に南町奉行に18年間在職したままなくなっている。

長谷川平蔵は、8年間火付盗賊改を勤めた後、身体を壊して退職して3ヶ月後に死んでいる。

奉行になった人物のほとんどが病気などで2〜3年未満で辞職している。それほど江戸町奉行や火付盗賊改めは過酷な部署なのであるから長谷川平蔵と根岸鎮衛は異例の長さである。


二人とも、庶民に混じって放蕩三昧をしていたのが役にたったのかもしれない。


二人とも江戸の庶民には受けがよく、長谷川平蔵は「いま大岡さま」と呼ばれて慕われていたそうである。
後にこの長谷川平蔵の屋敷跡に遠山金四郎が屋敷を構えることになる。


同じ時代に、二人のテツがいたのがおもしろいし、遠山金四郎の前に刺青をした奉行がいたのも面白い。


いまでも、刺青というだけで嫌われるからね。武士で、しかも東京都知事であり警視総監である南町奉行が刺青しているのだから、江戸時代というのは、けっこうくだけた時代であったかもしれない。


石原都知事がべらんめえ口調でガラが悪いのも江戸以来の伝統か?



じっさい、この根岸鎮衛は、罪を犯した者でも無罪にしたり、罪を軽くしてやったりしたために老中から呼び出されて叱責を受けたという記録がある。

長谷川平蔵は無宿人の更生のために佃島に人足置き場を作り、その経営のための資金を米相場で稼いで捻出していたため、侍にあるまじき振る舞いと、老中達から嫌われていた。


10両盗めば獄門と言われていた時代にもかかわらず、スリなども軽い罪にしてやったり、罪人の就職の面倒をみてやったりしている。

人が犯罪を犯すには、それぞれの事情があり情状酌量の余地があったということを考慮してやったのだろうね。

生まれも育ちもいいお坊ちゃんではこうはいかない。

冤罪を避けるため拷問などもめったにおこなわず、同心に命じて証拠固めをさせたという。



いまの警察よりましかもね。いまだに恫喝して冤罪を生んでいるからね。




遠山金四郎と長谷川平蔵を主人公にした小説はあるし映画、テレビドラマもあるが、この刺青をした奉行根岸鎮衛を主人公にした小説はないな・・・・・・まあ、遠山の金さんや長谷川平蔵に比べて、62歳の南町奉行じゃあ・・・還暦過ぎのじいさんだから小説になりにくいんだろうな・・・・と思っていたら・・・・・・


あった。



風野真知雄さんの『耳袋秘帖』シリーズである。

このシリーズは長編でありながらあやかしに関係したちいさな事件が短編としてはいるという構成になっている。

そのあやかしの話を根岸鎮衛が謎解きをしながら大きなほうの事件も解決していく。


ひとつ紹介すると・・・・・・・

『谷中黒猫殺人事件』

谷中に猫屋敷とよばれる家があり、猫が多いので苦情が南町奉行に持ち込まれるが、裁判をするようなことではないので、和解をさせるために苦慮しているうちに、その家にすむ美人姉妹の姉娘が殺され・・・・・むかし長谷川平蔵が解決したと思われていた押し込み事件が・・・・・

さらには・・・・化け猫騒動が近くであり・・・それを調べていると・・・・・・・・・


と短編の事件が解決されていくと長編も解決されていくという趣向である。


谷中界隈から根津神社、日暮里あたりの現在も残る地名が随所に出てくる。三崎坂、団子坂、七面坂・・・へぇ〜あそこが猫屋敷か・・・いまは質屋だけどね・・・・と思い浮かぶ地名が出てくる。

ホタルが舞っていたという蛍坂も残るが行くとガッカリするよ。

当時あった藍染川というのは現在はなく。くねくねとした”へびみち”といわれる路地が名残りをとどめる。

谷中のまわりはタワーマンションが建ち並び下町情緒も風前の灯である。


他の作品も同じような構成で長編に短編がはいている形になっている。この『谷中黒猫・・・・・』の後の『両国大相撲殺人事件』は、『谷中黒猫・・・・・』と同時進行でおきた事件のようになっている。

「猫屋敷がかたづいてないというのに・・・・」と同心がブツブツと文句を言っている。

雷電為右衛門が、この時代の人とは知らんかった。

なんと、この雷電が殺人事件の犯人では?と嫌疑がかかるのである。いまなら白鵬が犯人かな?


じっさい、ひとつの事件が解決するまで次の事件が起きないということはないのであるから、このシリーズのあり方は正しい。

事件というのは、あっちで起きこっちで起きと起きるものである。

第1巻から出てくる根岸鎮衛の愛猫の黒猫『お鈴』も、じつはこの『谷中黒猫・・・・』の猫屋敷から貰われてきたことがわかる。


風野真知雄さんは、うまいところに目をつけたものである。


いままでの時代小説と比べても斬新である。


出てくる部下の同心や芸者なども魅力ある人物がそろっている。


なんと、根岸鎮衛の死んだ奥さんも幽霊となって出てくるのである。



NHKあたりが時代ドラマにしないかと思う今日この頃であります。








                                






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参考文献










耳嚢〈上〉 (岩波文庫)
岩波書店
根岸 鎮衛

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新耳袋―現代百物語〈第1夜〉 (角川文庫)
角川書店
木原 浩勝

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耳袋秘帖 赤鬼奉行根岸肥前 (だいわ文庫)
大和書房
風野 真知雄

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
『はやぶさ新八御用帖』に根岸鎮衛、出てきてましたね
彼ももとは無頼の出で、刺青まで入れてたとは知りませんでした(^^ゞ
やはり上に立つ人は、若い頃にいろんな経験をして挫折をも味わったような人であってほしいですよね。
風野真知雄さんの『耳袋秘帖』シリーズも初耳です。これはぜひ読んでみなければ〜
キーブー
2011/07/01 16:49
☆ キーブーさんへ
文献によれば・・・ですが、あくまでそういう噂があった人物ということになってます。
風野さんの『耳袋秘帖』シリーズもおもしろいですが、根岸鎮衛の書いた『耳袋』もおもしろいですよ。
ねこのひげ
2011/07/01 20:54
猫が腕を抱えて寝る姿もカワイイものです。
ひるま
2011/07/03 15:14
☆ ひるまさんへ
腕を抱えるというのは、人間からすると愛くるしいですが・・・なにか意味があるんですかね?
ねこのひげ
2011/07/03 19:29
最初のサブちゃんの写真が決まってます。
メインのお話も現代と江戸時代を行ったり来たり、、、、
楽しませていただきました。
moumou.h53
2011/07/07 20:00
☆ moumou.h53さんへ
楽しんでいただけましたか。ありがとうございます(^^♪
ねこのひげ
2011/07/07 20:44

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