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zoom RSS 伊藤計劃の処女長編作『虐殺器官』・・・・遺作『ハーモニー』

<<   作成日時 : 2010/10/08 04:20   >>

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人というか生物というのはつねに殺し合いを続けていかざるをえないのだと思う。
生きていくためには、なんらかの形で、他の生物の命を奪い取らねば、己の命が絶たれることになるからである。
菜食主義など偽善でしかない。
人間の体の中。皮膚の上。体内でも、多くの生物が殺し合いを続けているのである。
数分間で、何万何十万もの微生物が、あなたの皮膚の上、体内で殺し合いを続けているのである。
その意味では、人間だけでなく、生物の歴史というのは戦争の歴史というか虐殺の歴史といえる。
平和なんてありえないのである!といえばあまりに悲しいか?

植物でさえも、殺し合いを続けているのである。自分が生き残るために、相手を殺し続けている。
それが生命であり、命あるものの形かもしれない。

ホトドキスやカッコウなどの”托卵”する鳥は、卵から孵るとすぐに”殺し”をする。目が見えないのに、すべての他の卵を巣の外に落としてしまうのである。

自分が、エサを独り占めするために。自分が生き残るために。


ぜったいに他の命を奪いたくないというのであれば、自分が死ぬしかない。自殺するしかない。でもそうすれば、己の体の中で生きている何億もの生物の命も奪うことになるのであるけどね。


ある学者によれば、人間はミトコンドリアの乗り物にしか過ぎないそうだ。人間は自分の意思で行動していると思っていても、実は、ミトコンドリアに操られているというのだ。
ミトコンドリアが、望む方向に人間というかすべての生命は向かっているというのだ。
それが、どんな方向か、未来なのかはだれにもわからないけどね。

ミトコンドリアが必要とする生命だけが存続し、必要ないと思われた生命は滅亡する。

ミトコンドリアを遺伝子とかDNAといいかえてもいいけどね。



と、本文か前置きかわからんことを書いておりますが・・・・・・


伊藤計劃さんの『虐殺器官』と『ハーモニー』を読んで思ったことの羅列であります。

羅列です。


『虐殺器官』

ナイーブで繊細で、毒々しいしくゲーム感覚の殺し合い青春小説。

ドフトエスキーの『罪と罰』をSFにしたような小説。

小松左京さんが落選させた理由もわからんわけではない内容であり、『ぜロ年代ベストSF』「今年一番読みたいSF小説』1位になった理由もわかる小説である。

バラードなどを知っている若い世代がいることには恐れ入るし、その知識の豊富さにも恐れ入る。

まるで知識の洪水である。

自分の知っている知識を詰め込めるだけ詰め込んだような小説。


ミームまで、出てくるとは、恐れ入る。


こういう小説を1位に押すだけの読者層が日本にあることはうれしいかぎりでもありますけどね。


状況を説明するのに他人の作品や映画を持ってくるのは・・・・・・小説としては、×ではないか?自分の言葉で語るべきではないか?

評論ではないんだからね。


この小説は、文字で書かれたウォーゲームなんだよね。現実の戦争もゲームには違いないけどね。第二次世界大戦のような現実の殺し合いのなかで生活してきた小松さんのような世代にとっては、認められない話なのかもね。

核兵器を、通常兵器とおなじように使える時代の到来に危機感を感じたのかも・・・・我々、戦争を知らない世代でも、戦争の恐怖は、親からの言葉で生々しく感じているが、30代・・・20代・・・・10代と下がるにつれて、戦争や死にたいする恐怖が薄れていくのかもしれない。

で、また戦争が始まることになる。


現実の戦争も、ゲームにちかくなりつつはるけどね。

アメリカ本土の机の前に座り、軍事衛星から送られてくる映像を、モニターで見ながら、アフガニスタン上空に飛んでいる無人機から爆撃できたり、バルカン砲で、地上掃射をできたりするのであるから。
アフガニスタンでは、プレイステーションのコントローラーで、無人の地雷除去戦車を操縦している。若い兵士にはゲーム機のコントローラーのほうがなれているからだ。

どんなに少女の後頭部に、拳が入りそうなくらいの穴が開いていようが、少年の体が半分ちぎれて、内臓がはみ出ていようが、現実に目の前に転がっているわけではないから、平気なんだよね。



いまに、ゲームが得意な子供が、兵隊として雇われる時代がくるかもしれない。幼稚園や小学生ぐらいの子供が、ゲーム機の前で、「死ね!死ね!」と叫びながら、コントローラーのスティクを握って、モニターのなかの敵を殺している姿があたりまえになるかもしれない。

本物の人間を殺しているとは、気づかずに・・・・・・・いや、本物の人間とわかっていても殺し続けるんだろうね。


人は、これほどに母親や妻子の死にたいして苦悩と贖罪を覚えるものなのかね。現実の事件を見ているかぎり、この小説に出てくる人物達は、あまりにナイーブ過ぎるように思うけどね。

自分がアバンチュールを楽しんでいるあいだに、妻子がサラエボで手作りの核兵器で死んでしまったことに苦悩して虐殺者になった男。

同じように苦しむ浮気相手の女。

大量虐殺者になる理由としては弱すぎるように思うね。

妻子を殺されただけで、虐殺者になるんなら、世界中に虐殺者が溢れ返ることなるだろうね。


主人公も、プロの暗殺屋にしては、ナイーブで、無防備すぎる気がする。


押尾なんて、寝ていた女が死んだのに、早く外にでて広いところを思い切り走りたいそうだ。反省のかけらもない。

女は、ただの性の道具だったんだね。


たぶん、ふつうの人間もそうだろうな。自分の利益を守るためなら、ほとんどの人間が信条や愛など、あっさり捨てるだろう。

英会話教師のイギリス人女性を殺した市川のほうが、可愛げあるというか、この主人公に近い気がする。

自分を罰するために、整形したとか、社会の最下層で働いたというのは、しょうせん自分を正当化するためのナルシズムだけどね。



主人公が、敵にナノマシンを飲まされた時点で、それを察知して、自動的に攻撃防御し排除するナノマシンを体内に入れていてもおかしくはないはずだと思うんだけどね。

国家の暗殺者ならそのぐらいの防御マシンは用意していると思うけどね。


この小説より、ローレンス・ブロックの酔いどれ探偵『マッド・スカダー』のほうが、リアル感がある。でも、若い人は、アル中の探偵より、こっちのほうに親近感を覚えるんだろうね。。

小説の内容が、ふだんやっているゲームに近いからなんだな。

浴びるほど酒を飲む若者も減っているそうだから、アル中のマッド・スカダーはかえって現実感ないのかな?日本の読者には、戦争ゲームのほうが親しみやすいということかな?



いま世界中で続いている戦いが終わらなければ、これほどの管理社会ができるまでに、資源が枯渇してしまう気がするしね。


手作りの核兵器も、いづれ現実に登場する事になるだろう。日常的に、核爆発の花が世界中で咲くことになる日も近いかもね。


じっさいに、1982年のフォークランド紛争のとき、イギリスの原子力潜水艦『コンカラー』にたいして、アルゼンチンの駆逐艦は、大量の機雷を容赦なくばら蒔いている。

撃沈は失敗に終わったが、もしこのとき『コンカラー』が撃沈されて原子炉が破壊されていれば、南大西洋は死の海になっただろう。

作品の中では、インドとパキスタンが核兵器を使用して戦争をするが・・・・じっさいには、どこが始めるのだろうか?

イランか?中国か?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・日本か?


現代において、人類が大きな壁にぶつかって足踏みを続けていることは間違いないけどね。

人類は、常に滅亡か?生存か?のタイトロープをしているのだ。

それだからこういう小説が産み落とされたのかもね。


バラードや光瀬龍の描いたペシミステックでニヒルな世界に、若者は憧れるものだしね。

20代の頃、読んであの世界に浸った覚えがある。

生きた筋肉は、バラードの『バーミリオンサンズ』に出てくる”生きた家”からの着想だろう。


若者は、死の漂う時の止まったような静寂の世界に憧れるんだよね。


光瀬龍さんは、地球から脱出できなかった人類の終焉を描いた作品郡が俊悦でありました。

ペシミズムの局地であります。


虐殺を起こさせるキーワードを発見したというが、それが具体的になにか?というのが、出てこないのが、残念というか、歯がゆいことである。



死はすべての生物に等しく訪れ、逃れようもないものだが・・・・・・

死ぬことを漠然と意識しだすのは、50歳代からかな?親や友人が死んでいって、初めて自分の死と言うものを意識しだす。


10代20代では、自分が死ぬなんて考えもしない。30代でも健康であれば考えもしない。


『ハーモニー』は、作者が死を意識したうえで書いている小説かもしれない。


作者の死後に、第30回日本SF大賞受賞。第40回星雲賞日本長編部門受賞。『ベストSF2009』第1位だそうである。

出版社が作者の死を利用したのかもね。


ナノマシーンの開発によりユートピアが現出するが・・・・・・人類は・・・・・・・


ガンというのは細菌によるガンや、遺伝によるガンもあるが、そのほとんどが、人間の体内で起きたコンピューター内のバグみたいな物だそうだ。正常な細胞になるべき細胞が、故障を起こしてガンになるということだ。

人間も、コンピューターのような冷たい金属の塊とそれほど変わりはないということだけどね。

蛋白質をDNAという紐で結び合わせて組み上げた人形のようなものかな。


じっさいにナノマシンを体内にいれて、つねに健康管理をさせようという研究開発をしている研究者がいる。

病気を見つければ、ナノマシンが処理できるものであれば、処理し、処理できないものは、外の担当医に連絡して治療をさせる。

人間の寿命は、健康であれば130年から200年はあると言われているから、完成すれば、そこまで生きる人間が続出するかもしれない。

幻ではなく。


両作品共に、管理される社会の息苦しさを描いているところが共通しているが、それだけの価値というか管理することによる利益があるのかは疑問でもあるしな。

すでに、共産主義も社会主義も、瓦解している現代においては、だれも、”絶対的な管理社会”を現出させようとは思わないだろうしね。ある意味、古いテーマともいえる。

絶対管理社会というのは、絶対君主や独裁者に支配されている封建帝国と同じ社会といえるからね。

北朝鮮のように。


むしろ、国家や企業が存続するなら、ゆるやかな管理というか統制を、形成していくのではなかろうか。


人間がミトコンドリアに支配されているように。



伊藤計劃

2009年3月20日 34歳の若さで肺ガンのため死去。

長編2冊?3冊?、1冊はゲームのノベラゼーションであるから純粋な意味でのオリジナル小説とはいえないが・・・・ただのノベラゼーションではなく、小説としてキチンとしているのが良い。


伊藤さん本人も、もっと書きたい小説があったのに無念だといっているが・・・・

どうなんだろうね。


両小説とも死をテーマにしているところからすると、肉体は作者の死を、知っていたのかもしれない。


それとも、ミトコンドリアが、彼の肉体と精神を必要ないと判断したのかもね。

それとも、危険と判断して抹殺したのかも・・・・



・・・・・・・・・・・・ 生存競争のレーゾンデトールとはなんだろう・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・生命同士の戦いの先に何があるのだろうか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






                               




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参考文献









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伊藤 計劃

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虐殺器官 伊藤 計劃著
著者は34歳という若さで癌と闘病して亡くなられた。そしてこれがデビュー小説。 話題になっている作品だったので、「神格化、過大評価されてるのかな?」とチラっと思ったりもしたけど、ホント申し訳ありませんでした、という感じです。 ...続きを見る
国内航空券【チケットカフェ】社長のあれこ...
2010/12/07 11:00
「伊藤計劃の処女長編作『虐殺器官』・・・・遺作『ハーモニー』」について
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つれづれなるままに〜
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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
誰にも迷惑をかけず生きているつもりでも、日々たくさんの命の犠牲のうえに自分の生は成り立っているんですよね。
だからといって自殺するとしてもそれまた多くの命を道連れにすることになるという・・・なんだか立ち往生してしまうような感じですよね(~_~;)

押尾は・・・若くて前途洋々の身だったというのに、堕落しきって人生に退屈した老人みたいなことをして。恥という感覚がないんでしょうね。すごく異質な感じがします。
キーブー
2010/10/08 21:06
すいませーん、コメントお蔵入りしちゃいました
お手間ですがよろしくお願いします
キーブー
2010/10/08 21:08
☆ キーブーさんへ
そう、だから、人は謙虚であらねばならないと思うんですよね。
キリスト教みたいに、人間が全ての生物の一番上にあるという考え方では、だめなんです。
どうすれば、いまの状態から抜け出せるか、これから咲きも、試行錯誤の連続が続くでしょう。

押尾は、アメリカ人的な思考なんでしょう。自分の間違いを認めることは、負けることだという考えなんです。
日本では通用しないですね。
ねこのひげ
2010/10/09 05:01

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