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zoom RSS 面白い作家ー岩井三四二(イワイミヨジ)

<<   作成日時 : 2010/03/25 05:14   >>

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岩井三四二という作家は、かなり変わったおもしろい作家である。歴史小説風に言うと、カブキ者というべきか?ブヘン者というべきか?
ペンネームからして他の作家とは違い軽い。小説のタイトルも変わったものが多い。
『難儀でござる』『城は踊る』『たいがいにせえ』などなど・・・・・○○伝とか英雄とか名将などという言葉が出てこず、軽い(^_^;)
小説の主人公も、普通ではない。いや普通なのだが普通ではないのである。ナンノコッチャ!ではあるが、書店で、岩井さんの作品を探して読んでみるとわかる。

歴史小説なのに、そのほとんどの主人公が、それだれ?みたいな連中ばかりなのである。

ふつう歴史小説を書こうという作家は有名な人間を描こうとする。

代表的なのが、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康である。

いまやっているNHKの大河ドラマ『龍馬伝』の坂本龍馬なんて何十人の有名無名の作家が描き、なんどテレビドラマになったことか。

岩井三四二さんは、そういう超有名な連中を脇役にして、ほとんど下っ端の下っ端を主人公にしている。

会社でいえば、一流企業ではなく、町工場、下請けの下請け。社長ではなく、平社員、契約社員の立場から歴史を描いている。

こういう作品を描くにはそうとうな筆力がいると思う。

架空の無名の人物とはいえ、歴史のなかにリアルに存在したように画かねばならないからね。

有名な人物は、先達がいる分、逆に書きにくいという人もいるかもしれないけどね。でも、資料がある分、書きやすいのではなかろうか?
解釈の仕方は違っても、織田信長なら桶狭間、本能寺を書かないわけにはいかないからね。


じっさい、岩井三四二さんの描く主人公は、上の人間に翻弄される奴が多い。


簡単な仕事の以来を請けたつもりが、とんでもない目に合わされる甲賀忍者の頭領”伴与七郎”の話『竹千代を盗め』とか典型的な例だろう。
忍者というのは季節労働者や契約社員みたいなものだ。仕事が終わったら給料を貰って国に帰る。

タイトルにも”誘拐”を使わず、”盗め”とつけるのがうまい!このタイトルにも意味があることが読むとわかる。


最初は、人質になっている徳川家康の子供竹千代と奥さんを救出してくるだけの簡単な仕事として依頼を受ける。

竹千代というのは、後の徳川家康、松平元康の息子で、徳川家というのは、子供のとき、ほとんどが竹千代とつけられる。
たとえば、二代将軍徳川秀忠。その秀忠の子の三代将軍徳川家光。いずれも子供のときは竹千代と呼ばれている。
徳川家康も竹千代と呼ばれていた。

この竹千代を、駿河の今川の屋敷からこっそり連れ出してくるだけだから、楽な仕事と思ったら、徳川家内部の家来同士の勢力争いに巻き込まれるワ、今川方に邪魔をされるワ、仕事の難しさに部下が見限って甲賀に帰るワで、主人公である甲賀の伴与七郎が苦労するという話である。

しかし、伴与七郎の考えたアイデアにより、なんとか竹千代は今川から取り返されることになる。

これは実際にあった話で、それに伴与七郎が絡んでいるというところがフィクションなのである。

この時の竹千代というのは、徳川家康の長男の松平信康のことで、駿府から取り返されたと思ったら、徳川と織田の同盟のために、織田信長の元に人質として送られることになる。

徳川家康は、子供竹千代が可愛いからとりかえしたかったわけではなく、同盟のために人質として織田に渡すために、息子が必要だったことに気がついて、伴与七郎は、愕然とし、寒々しいものを感じる。

竹千代が、人間というより取引の材料、物としてあつかわれていることがわかる。

タイトルの誘拐ではなく盗めの意味がここにある。




徳川家康自身もおなじようなめにあっている。


徳川家康が、まだ竹千代と呼ばれていた子供のとき、人質として今川に送られる途中、家来である戸田康光が裏切って、織田に家康を送る。
家康はこのあと、織田に殺されてもしかたないと父親から見捨てられた形になり織田家で人質としてくらすことになるが、織田と今川との人質交換で、今川に送られ人質となる。


これは、子供だった家康に同情した今川義元が、家康を引き取るために、不利な人質交換に応じたという説もある。

なぜなら、今川が人質交換に応じる必要性は何もないのである。

駿河の大大名である今川にとっては、少年家康が殺されても痛くも痒くもないからである。当時の駿河は小京都のようで、今川義元は京都貴族のような華やかな生活ができる巨大な力を持っていた。

当時、まだ力のない松平と名乗っていた三河の小大名である徳川など、今川軍が攻め滅ぼして三河を領地にすることも可能だったからである。

力の差が歴然としていたから、侵略されて滅ぼされないために三河の徳川は、駿河の今川に頭を下げるしかなかったのである。

今川義元は、少年家康を自分の姪鶴姫(のちの築山殿)と結婚させるなど家康を可愛がっている節もある。おかげで今川の親戚となった家康は奥さんの尻に敷かれぱっなしとなるけどね。(^_^;)

社長の姪を嫁さんにした平社員の立場というか、藤原紀香を嫁さんにした陣内智則みたいなものでる。

悲喜劇もいいところなのである。ヽ(^o^)丿


それでも、家康の家来にとっては、自分達の殿様である家康を人質として取られていることに変わりはなく、桶狭間の戦いで今川義元が殺され家康が三河に帰るまで、家来達は今川からの無理難題に耐えていかなくてはならなかった。

家康も”三河の小セガレ”とか呼ばれて、今川家の家来からかなりのイジメを受けたようである。

これは、家康のおじいさん松平清康が、合戦の最中に家来に殺されたため、徳川家が分裂して弱体化していたためである。このとき、使われた刀が村正で、以降、徳川家では村正は不吉ということになる。妖刀村正などと呼ばれた。村正にとってはいい迷惑ではある。

まだ二十歳ソコソコと若かった父親の松平広忠の力では、三河を統一しておけなかったためである。

さらにその広忠も24歳で死んだために、三河の国は殿様不在となり、他国から侵略されないために、今川の力を借りる必要があったのである。

徳川の岡崎城に今川の家老が乗り込んできて、居坐り、家康の家来は顎でこき使われる。三河は駿河の”植民地”になっていたといえる。



あつかいがどんなによくても、今川義元の姪と結婚し、立派な屋敷に住んで、何不自由ない贅沢な生活ができても、人質は人質だったと言えるわけですね。

イプセンの『人形の家』を読むまでもなく、奴隷は奴隷なのである。

見えない鎖で繋がれているということです。


普天間基地問題でゆれる日本も似たようなものですが・・・・・ネッ?(~_~)



だから、駿府から取り返した奥さんであるはずの今川義元の姪の”築山殿”を、城にいれず外の屋敷に止めておくなど冷たい扱いをしている。



このおじいさんの松平清康が、生きていれば、家康を待つまでもなく織田信長や豊臣秀吉を飛び越して、徳川が天下を統一しただろうと言われるぐらい優れた人物だったそうである。

まっ、あくまで徳川家の人間が言っている話で”、タラレバ”の話ではあるが。

なぜならこの竹千代、徳川家康の息子松平信康も優れた人物と言われていたからである。

とかく早死にした人間は高い評価を受けるものである。

ブルース・リー、ジェームス・ディーンしかりである。



竹千代を、徳川家康の家来に渡すところで小説は終わるが、竹千代は成人して松平信康となってから、母親の築山殿ともども、今川方に内通しているのではないかと、織田信長に疑われ殺されるという歴史上の事実を知っていると、この小説の最後の部分で納得する人も多いだろう。


歴史の裏に、こんな事情があったのか!と思わせるのがうまい。


伴与七郎は、甲賀の忍者であるが、『ナルト』や『カムイ』などに描かれているような超人的な人間でなく、リアルな忍者として描かれている。

伴与七郎は、竹千代を助けるのにいくらいくら金がかかるかというような予算の話を徳川から依頼に来た人間と交渉したりする。

宿泊費がいくら、交通費がいくらとか、武器の購入費にいくらとか、部下の給料がいくらとか、見積書を出してみせる。

相手も相手で、値切ったりする。

一家の主である人間は、家族を食べさせるために苦労するという、ある意味、現代にも通じるリアルな話になのである。

鉄砲を撃ちそこなって的をはずすと、もったいないことをした高いのにと嘆くなど、生活のにおいがプンプンとする小説なのである。

しかも、どこかペーソスとユーモアを感じさせるのがよい。

だれそれが生まれたときに、鳳凰が舞ったとか、白い鷲が舞い降りたとかのような神話的な逸話がないのがよい。

北朝鮮など、いまだにキム・イルソンの誕生日に白いタヌキが発見されたとか、アホな話を作っているけどね。


戦闘シーンでも理屈がないのがいい。

超人的でないので、今川の侍に殺されかけて大怪我をしたりする。

部下も殺され、自分も捕まって顔が2倍にはれ上がるぐらいにボコボコに殴られ拷問される。公私混同でつれてきた自分の愛人まで殺される。

けっこう、情けない等身大の男なのである。


甲賀や伊賀の里は、山間にあり、田畑を耕して生活することが難しく、山野を走り回って獲物を狩る猟や、山菜や薬草を刈って薬を作り、諸国に売り歩く行商などを行っていたので、自然と情報収集などの仕事を得意とするようになったのである。

それが忍者と呼ばれる人間を生み出す下地になったのである。


甲賀や伊賀の人々は、華やかではない裏方の、人が嫌うような仕事を引き受けて家族を養っていたのである。





他の作品でも、おおむね同じように無名の人間が活躍する。

活躍というか、七転八倒するというか・・・・徳川家康や織田信長のように英雄ではなく歴史書には残らないが、必死に生きていこうとする人間達の滑稽でほほえましく涙ぐましい物語なのである。



で、最近、このタイプの作家が増えてきた気がする。


『のぼうの城』の和田竜とか・・・・・

『哂う合戦屋』の北沢秋とか・・・・

『黒牛と妖怪』の風野真知雄とか・・・・・


どれも、漫画のような軽い乗りというか・・・・


違った側面から歴史を書こうとする作家たち。歴史小説にも新しい流れが生まれつるあるようだ。



有名な歴史上の人物の話に書き手が閉塞感を覚え、読んでいる側が飽きてきたのかもしれないね。


徳川家康も坂本龍馬も何十回も読んだもんね。


どう書かれようと新鮮味がなく飽き飽きしているといえる。



ニューエイジ歴史作家、台頭!ということでおもしろいことでありますね。




                                  


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参考文献






難儀でござる
光文社
岩井 三四二

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ふさいちの感想 この ...
難儀な短編集!戦国時 ...
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城は踊る
角川学芸出版
岩井 三四二

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